Re.30分小説?いいえ無制限です。

30分小説?いいえ駄文です。
http://ameblo.jp/amemoyos/
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ご都合主義による工程 『薪』『真珠』『指物師』 from.A→o 

原文
http://ameblo.jp/amemoyos/entry-12026181678.html


テーマ
『薪』『真珠』『指物師』


タイトル
ご都合主義による工程


本文
 とある時代とある場所に伝説の指物師がいた。  
何が伝説なのかとか言いたいことは色々あると思うが、まず指物 師とは一体何なのかから始めよう。
 指物師とは箪笥・長持・机・箱火鉢など板を差合せて作る木工品の専門職人のことである。
 さて、何が彼を伝説たらしめてる由縁か…だが。
 それは『発想の豊かさ』である。
 この時代にはお金に物を言わせ、無理難題を願う趣味の悪いお客様が数多く居た。
 しかし彼は性格なのか、そんな道楽者頼み事を断らず、寧ろ嬉々として依頼を受け、数多の職人では思いもつかない木工品をきちんと完成させる。
 だからこそお客様たちの間で『伝説』と語り継がれているのである。
 本日も依頼が男のもとに入っていた。


 「木材から真珠を創りだしてくれ」


 この依頼が如何に矛盾を孕んでいるかお分かりだろうか。
 そもそも真珠というのは貝の体内で生成される宝石であり、貝殻成分を分泌する外套膜が、貝の体内に偶然に入りこむことで真珠が生成されるのである。
 つまり成分は貝殻と等しいものだ。
 それを木材で作れとは、実に意味がわからない。
 それでも彼は、依頼に快く承諾し作業にとりかかった。
 まず彼は蔵の中に閉まってある上質な薪を一つ工房に持ち込んだ。
 持ち込んだ薪はそこら辺の木を切り倒して作ったものではなく、艶々とした年輪が渦を成し、それだけで芸術品と言っても過言ではない程の質のいい最高級の薪である。
 それを丁寧に、手のひら大の大きさまで愛用のナイフで切り出し、今度はヤスリを使って、丸い真珠の形を模した木の玉にした。
 もうこの時点で木材は、まるで宝石になったような輝きを放っていた。
 これをお客様に差し出してもいいのだが、この程度で作業を終えるようならば、誰も彼を『伝説』などと呼ぶことはない。
 ここからの作業が本番であり、彼を『伝説』と呼ばれる由縁になる工程である。
 彼は作業の場所を変えるため、木の玉を手に取り工房の奥へと進む。
 分厚い垂れ幕を手で押し上げ進むと、先ほどの部屋よりも小さな部屋に辿り着く。
 その部屋は、明るかった今までの部屋とは裏腹に、暗くて陰鬱とした雰囲気で、空気も少し悪かった。
 棚には、日本語ではない文字の書かれた本や生前の姿が想像もできない動物の骨などが鎮座している。
 この時点で普通ではないのだが、もっと奇妙なことにテーブルの上には星のマークのが描かれた布が敷いてあり、埃っぽい部屋なのにもかかわらず、布の上には塵一つ付着していなかった。
 彼は慣れた手つきで、ぽんっとその布に描いてある星の中心に、先ほど削りだした木の玉を乗せ、ごそごそと後ろの不気味な棚からから麻袋を引っ張りだす。
 その袋に入っていたのはアラレ石とタンパク質の粉塵。
 これは真珠を形成するために必要不可欠な素材である。
 彼は、パラパラと木の玉に振りかけ何やら呟き始めた。


 「――。―――。―。」


 呪文のようだが、何を言っているかはサッパリ聞き取れない。
 しかし、その呪文に応じるかのようにテーブルの上にある木の玉と振りかけた粉が光り始めた。
 光の中、先ほどの二種類の粉が木の玉に交互に重なりはじめ、見る見るうちに真珠層が形成されていく。
 そうしてあっという間に一つの大きな真珠ができた。
 いやタダの真珠ではない、真珠の層からうっすらと覗くのは木の年輪である。
 これにて彼の『伝説』的な工程は全て終了した。
 彼も満足気にその作品を眺め、丁寧に布で包み箱にしまった。
 残る仕事は後日お客様に渡すだけである。
 彼は少しばかり疲れたのか、ググッと体を剃らせ息を吐く。
 元いた明るい部屋に戻り、窓を開け、懐から取り出したタバコに火をつける。
 窓の外に煙を吐き出しながら一人呟いた。


 「これで金が入る予定ができたし、ちょっくら魔女っ子たちとでも戯れてこようかな」
 
 窓の外に広がる風景は、人を乗せた絨毯が空を飛び交い、あらゆる所で『魔法』と書かれた看板が掲げられていた。


 「全くボロい商売だぜ、こんな簡単な事で大金が手入る。皆魔法に頼りっきりで、本物の木材を使わないから糞みたいな作品しか出来ないってだけなのによ、ちょっと考えれば直ぐに分かるのに、魔法のせいで考える力ってもんが欠如してしまったんかね。」


 懐から一枚の蜥蜴の模様が刻まれた皿を取り出して、更に言葉を続けた。


 「こないだ見つけた掘り出し物、嗚呼…実に良い。味があるというか…こういった技術に優れた作品は俺には作れない逸品だ。まったく、こういった作品を求める人はもういないのかね。さてと、出かける前にこの皿をツマミにして酒でも啜るとしようか」


 豪快な彼の笑い声が工房の中に響く。
 これは、魔法時代大江戸帝国城下町に住む指物師の話。

誘拐事件 「エビ」「お鍋」「炎」from.A→o 

原文
http://ameblo.jp/amemoyos/entry-12025792863.html


テーマ
「エビ」「お鍋」「炎」


タイトル
誘拐事件


本文
 私は暗闇の中で目を覚ます、どうやらやたらと早く目が冷めてしまったようだ、どうやら外はまだ夜らしい。
 このまま二度寝しようとも思ったが、脳が少し覚醒しだしたらいつもと違う違和感を強烈に感じ始めていた。
 いつもとは違う体の渇きに最初に気が付き、次に自分の体の自由が効かないことに気が付いた。
 金縛りにでも現在進行形であっているのだろうか?いやどうやらそうではなさそうだ、バタバタと手足は動く、金縛りなら動かないだろう。
 更に脳が覚醒し、私は何かに縛り付けられていると気が付いた。
 どうゆうことだ?私は錯乱した、辛うじて動く手足を更にバタつかせる。
 しかし体が進む気配は全くない、ただただ芋虫のように藻掻くだけだ。
 私はどうなってしまっているのだろうか?一体ここはどこなのだろうか?ひたすら足掻いた後、私は冷静になって今置かれている状況を把握することに努めてみた。
 
 問一
 目を覚ます前、私は何をしていたのだろうか?
 特に何も、今までと何も変わらない日常。
 しいて言うならば少し遠い所まで、みんなと一緒にご飯を食べに行ったくらいだろうか?前日の記憶からではこの状況は殆ど読み解くことができないようだ。
 …よし、次だ。
 
 問二
 今周りはどんな状況であるか?
 先程から言っているが、真っ暗で視覚的観点からの情報は一切わからない。では、音はどうだろうか?些細ではあるが、ゴトゴトと何やら振動音が聞こえてくる。
 私は何かによって運ばれているのではないだろうか?運ばれるなら何処に運ばれているのだろうか、心当りがない、最初の問の答えの通り、悪いことは何もしていないし、ましてや恨みなど買うようなことは一切ない。
 自分の主観だから断言はできないが、私はただただ平凡な男だ…。
 どうして私にこの様な不条理な状況に陥ってしまっているのか…甚だ疑問でならない。
 さて、悲観にくれていても仕方がない…次に行こう。


 問三
 身体的変化はあるだろうか?
 怪我などはして無いようだ、その証拠にどこも痛くはない。
 それどころか、怪我しないようにすごく丁寧に縛られている感じもする。
 ただ一つ重大な問題がある、それは、この場所はとても寒いのだ…。
 生命の危機を感じるほどに…。
 もし、これは妄想に近い考えだが、もし、私を捕まえて奴隷の様に働かせる事を目的とした誘拐ならば、この寒さは失敗ではないだろうか?この寒さで私が死んでしまったら、奴隷として商品の価値など皆無に等しくなってしまうからだ。
 ならば、誘拐などの可能性は低くなるということだろう。
 ……いやまてよ?この世の中には死体を好んで食べる変態が居ると聞いたことがある。
 もしそうだったら…ブルルッ…そんなことは考えないようにしよう…私の妄想癖には自分でもほとほと呆れてしまう。
 なんとなく情報は集まった気がする、そうなれば総合的に考えてみようか。


 まとめ
 妄想ありきで考えると、私は拘束され、何処かへとかに運ばれている。
 犯人側のミスで温度調節の設定を間違ってしまっており、私は今瀕死の状態になってしまっている。
 …とのことではないのだろうか?拘束されているのは事実だし、この寒さの理由はミスであるとしか考えられない。
 ただゴトゴトという音だけで運ばれているとは判断付かないが…この状況で誘拐ではない可能性は皆無だろう。
 いや…しかし…寒い。ううむ…ダメだ、気を失ってしまう…。
 このタイミングで意識を失うことは非常にまずい…が…嗚呼…もう駄目だ。
 どんどん考えもボヤケていって、最終的に何も考えることができなくなってしまった。


 ―


 …ハッどれくらい気を失っていたのだろうか?気を失う前とは打って変わって視界が明るい。
 なるほど、先ほどの場所と違って天井がないからか。
 しかし周りは壁に覆われている、私が閉じ込められているという事実は変わっていないようだ。
 しかしあれは何だ黒い水?体が半分ほど黒い色の水に浸かっているのが見える。
 それに私の仲間も周りにいる。
 誘拐されたのは私だけじゃなかったのか…若干の安堵感がこみ上げたが、すぐにそれが間違いだったと気がついた。
 動いていない、私の仲間はぴくりとも動いていない、拘束もされていないのにだ。
 恐ろしくなって目を背けると、見たこともない新顔までそこにいることに気がついた。
 無差別的に誘拐され………うわ!あっちに居るやつなんで既にバラバラに解体されているじゃないか!なんだここは!地獄のようだ!助けてくれ!!
 待て…!…なんだアレは?炎?我々のいる地面の下から炎が噴いている!このままでは私は茹でダコになってしまう!…いやタコなんかじゃないんだから茹でダコにはならんだろうが…おおっと、自分に突っ込んでいる場合じゃない、逃げないと!早く!…早く体を動かすんだ!ああもう見てらんない!!
 …はて?何かがおかしい、どうして私は自分の姿を見ているのだろうか?
 …ああそうか私は既に死んでいるのか…


 ―


 今日は私の誕生日だ。家では妻が私のエビ鍋を作って待っていてくれる。
 さあ、早く帰ろう楽しみだ。